毎夜の〆はセレナータ(愛の歌)で
グアナファトは18世紀に世界の約3分の1の銀を産出していた。その富がメキシコで一番美しいコロニアルシティを造り、町全体が世界文化遺産に登録されている。市街地は狭い小路や坂道も昔のまま保存されているので歩いて散策し、気に入った店があれば立ち寄れば良い。何より夜も安心して歩けるのが嬉しい。
メキシコではマリアッチというギターやトランペット、ヴァイオリンなどの生演奏に合わせてセレナータを歌う流しの楽団があり、どこの町にもあるがグアナファトのマリアッチは特に有名だ。サンディエゴ教会の前では、夜になると伝統的な衣装に身を包んでセレナータを奏でるマリアッチが始まり、楽団の後をついて幻想的な街なかを一緒に歩くことができる。私たちも参加してとても楽しかった。私たちのホテルは町の中心部にあるラウニオン広場に面し、カフェテリアでは朝から夜遅くまで流しのマリアッチが演奏していた。私たちは毎日カフェテリアでカクテルを飲みながらセレナータを聴いてその日を終えた。
ミイラ・ミイラ・ミイラ
グアナファトにはミイラ博物館がある。中には百体以上のミイラが陳列されているが、エジプトのミイラのように特別な措置が施されているわけではない。グアナファトの鉱物質の土壌と乾燥した気候が、普通に埋葬された遺体をミイラにしてしまうのである。
だから背広姿やドレス姿のもあれば、幼子や赤ちゃんのミイラもある。今にも生き返りそうなぐらい生々しいミイラをみていると、生前どんな暮らしをしていたのだろうかと彼らの人生に思いが及ぶ。色々な意味で胸いっぱいになって外に出ると、修学旅行の生徒たちがお土産のミイラ飴を買ってワイワイ騒いでいた。何だか生と死のコントラストを見せ付けられたようで、彼らよりずっと死に近い私には学生たちの喧騒がとても眩しく見えた。