タブラオで本場のフラメンコを観る
スペイン旅行の目的の一つはフラメンコを観る事。オペラ「カルメン」の舞台であるセビーリャはフラメンコの本場である。老舗のタブラオ(フラメンコを上演するレストラン)で食事をした後にワインを飲みながら観た。バルセロナで観たフラメンコは観光客向けにショーアップされていたが、セビーリャのはその日の気分で踊りを変えるアドリブもあり、よりフラメンコの本質に近い内容だった。
ステージ上のテーブルの周りに車座になって腰かけた男たちが手拍子で唄を歌い始めると、その中の一人が「さて、いくかっ!」という感じで踊り始める。きっと昔のロマ(ジプシー)の集落では、こうやって夜ごとフラメンコを踊っていたのだろう。
男性ダンサーに魅了されて
マドリッドの王立劇場では男性ダンサーのワンマンショーを観た。劇場といってもタブラオのような造りで舞台も近く、つまみとワインが付いていた。そのダンサーは人気があるらしく、彼が汗まみれになって激しく踊ると、客席から「オレ!オレ!オレ!」とかけ声がかかり、歓声と共に手拍子や拍手が送られる。一瞬ここはどこかの大衆演劇小屋かと思うほどの熱狂ぶりで、これぞ本場のフラメンコ!という感じだった。
バルセロナ、セビーリャ、マドリッドと三者三様のフラメンコを観て再発見したのは、男性ダンサーの体一つで激しく表現する踊りのセクシーさだった。
他愛もない内容もあるフラメンコ
セビリアでスペイン語とフラメンコを学んでいる旭川出身のナナさんから、フラメンコの歌詞には「私の前掛けが盗まれた!」とか「博打に負けて口惜しい!」とか他愛もない内容も多いと聞いた。しかし、そんな他愛のない内容でも眉間にしわを寄せて踊る姿からは、人生の深い悲しみや憤りが感じられる。それは遠く故郷を追われたロマの人々の悲しい歴史のせいなのかもしれない。