ドン・キホーテの舞台を通ってトレドへ

グラナダからマドリッドへ向かう時に通ったスペイン中央部カスティーリャ・ラ・マンチャは標高800mの赤茶けた土地が続く。かつてこの辺は農作物が実らない不毛の土地だったが、今は灌漑技術が進んだお陰で一面にオリーブ畑が広がっている。
世界で一番読まれている物語「ドン・キホーテ」の主人公は自分のことをラ・マンチャ地方の騎士と思い込み、怪物と勘違いした風車に槍一本で戦いを挑んだ。今でも丘の上には当時のままの風車が数台残っていた。
余談だが、市議会議員になりたての頃、議会における既成事実や慣習に一人で異議申し立てをしている自分の姿がドン・キホーテと重なった。傍から見れば無謀で滑稽に見えるかもしれない行為も、本人はいたって真面目で本気なのだ。

エル・グレコが愛した古都トレド

トレドはマドリッドから南へ70キロのところにあり、かつては政治・経済の重要拠点だった。1561年に首都がマドリッドに移り、「16世紀で歩みを止めた街」と言われ、タホ川に囲まれた旧市街は世界遺産に登録されている。画家のエル・グレコが晩年を過ごしたことでも有名だ。私たちが泊まった丘の上のパラドール・デ・トレドのテラスからは町が一望できるため、多くの観光客が訪れていた。私たちも朝夕にテラスに陣取り、様々に変化する美しいトレドの街並みを存分に味わった。
旧市街に行くと、マドリッドからの日帰りツアーもあるらしく、世界中の観光客で溢れかえっていた。誰もがエル・グレコの絵画を見ようと、カテドラルやサント・トメ教会、エル・グレコ美術館を足早に巡っている。「町全体が博物館」と言われるだけあって、どこに行っても歴史を感じる佇まいなので写真を撮りまくった。が、後で見返してみるとどれがどこだかさっぱり判らない。「写真は忘れない内に整理する!」これは旅の鉄則だ。

パラドールから見えるトレドの旧市街

丘の上にはドン・キホーテが戦いを挑んだ当時の風車が今も残っている。

エル・グレコの傑作『キリストの聖衣剥奪』があるカテドラルの展示室

パラドールから見た夕暮れ時のトレドの旧市街