旅の流儀、土産に日常品を買う

私にはいくつか「旅の流儀」というものがある。その一つが自分用の土産に日常品とアクセサリーを買うこと。沢木耕太郎は若い頃の旅では自分用の土産を買わなかったという。なぜならいつでもまた来ることができると思ったからだそうだ。しかし、私はそうはいかない。60歳を過ぎてからの旅はもう二度と来られない覚悟の旅である。自分用の土産は重要だ。バングラディッシュではフライ返し、メキシコでは陶器の小鉢、ドイツではキッチンばさみを買った。
今回のスペイン旅行では大皿を買おうと決めていた。ホテル近くの陶器店で見つけた大皿は鮮やかな色が美しく、スパゲッティにあんかけ焼きそばにと大活躍し、料理を盛り付ける度にスペイン旅行を思い出させてくれる。一粒で二度美味しいとはこのことだ。

旅の出会い・袖すり合うも多生の縁

ポルトでファドを聴いているときに隣席のシニア夫婦に声をかけられた。どうやら新しく買ったカメラの使い方が解らないらしく教えてほしいと言う。ああでもないこうでもないと拙い英語ともっと拙いスペイン語で話している内にマドリッドに住んでいることが分かった。2週間後にマドリッドに行くと言ったら一緒に食事をしようと誘われた。
グラナダのホテルでは一人旅の日本人女性がいたので声をかけたら、宝石デザインの仕事で毎年旭川に来ている人だと分かった。私たちと同じ頃にマドリッドに着くというので、シニア夫婦と一緒に5人で夕食を共にすることにした。
「袖すり合うも多生の縁」というが、私は旅先で色々な人たちと知り合うのが大好きだ。現地の人ならガイドブックでは判らないその土地の細々した事を訊ねることができる。旅人にはなぜこの国に来たのかとか、故国のことを訊くことが出来る。名所旧跡よりも何よりも人との出会いが一番面白い。

フェリペ4世の銅像がある宮殿のオリエント広場

宝飾デザイナーの田代和美さんたちと老舗レストランへ

ホテル近くの裏通りの陶器店で大皿を物色中