首都の下は古代都市
メキシコには34の世界遺産があるが、メキシコ・シティのソカロと呼ばれる歴史地区もその一つ。ソカロにはメキシコカトリック教会の総本山メトロポリタン・カテドラルやメキシコ独立の舞台となった国立宮殿などがあるが、驚くべきことは、それらの建物の下にアステカ帝国の都市遺跡がすっぽり埋もれているということだ。
コロンブスが発見する前、ここには独自の高い文明を持つ先住民が住んでいた。テスココ湖の中に建てられた彼らの都市は、高い塔や神殿などが水中にそそり立ち、この世の物とは思えない美しさだったという。しかしスペインは侵略後、それらの神殿や宮殿を破壊し、その石材でスペイン風の市街地を築き、湖を埋め立ててしまった。だから未発掘の巨大な都市遺跡の上に首都があるという訳だ。
先住民の暮らしに思いを寄せて
国立宮殿の裏にテンプロ・マヨールと呼ばれるアステカ帝国の中央神殿跡が発見され、地下の遺跡の一部に行くことができる。スペイン様式の建物が立ち並ぶ首都の街中に、工事現場のように突然遺跡が表れていて、その遺跡の続きがこの街の下にずーっと広がっていると思うと、タイムスリップしそうな不思議な感じがした。敷地内には博物館もあり、発掘された品々が展示されている。
メキシコ・シティから50キロ北には、メキシコ最大のテオティワカン族の宗教都市の遺跡がある。広い敷地に太陽と月のピラミッド、巨大な神殿、二つの宮殿、南北に貫く大きな道路など、しっかり都市計画されていたことが伺われる。しかし彼らは8世紀に忽然と消え、そのなぞは未だ解明されていない。
侵略によって破壊された湖上都市、素晴らしい文明を築きながら突然消えた民、いにしえのメキシコはどんな風だったのか、想像力が掻き立てられる。